鵠沼の家づくり

家をつくること

 五月晴れを期待していたものの、やっぱり雨降り。一日まるまる現場の日です。

杉並の家づくりも終盤。新しいバルコニー、下地が組み終わります。

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 玄関の庇を兼ねて、洗濯場から外に出られる場所。

なにかと便利に使えると思います。

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 鉄骨の跳ねだしを中心に、互い違いに組まれた下地の木組み。

図面には、大体の感じを描いておいて、あとは現場でのアドリブ。

こういうものは、棟梁にまかせておけば、ひとりでに?出来上がります。

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 木組みの加工は、ほぞとほぞ穴を組み合わせて、凹凸に組んであります。

組みあがると見えなくなってしまうけれど、丈夫に長持ちさせるための仕事。

ひとつひとつ、さまざまな大きさの材料が、適材適所に納められていきます。

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 新しくつけられた窓も、メインは木製の枠。アルミサッシはあくまで脇役です。

ここまで、およそ五ヶ月。リフォームとはいえ、かなりの手間と時間の集積で、

ひとつの家が生まれ変わります。

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 午後は、鵠沼の家へ打ち合わせ。すこしずつ木々が植えられて、アプローチが

豊かな風景に変わっています。だんだんと、住まいらしくなってうれしい。

  あらためて、家づくりとは何か。原点を見つめなおす機会をいただきます。

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 庭のテーブルの前、ソロの木が植えられていました。

大きく育って、夏の木陰を創り出してくれますように。

家づくりの一年

 住まいを設計して家が出来上がるまで、おおよそ一年はかかります。

建売住宅では3~4ヶ月で済んでしまいますが、私たちが関わる方々の家は

設計半年工事半年がいいところです。

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 住まい手の要望を聞き、場所の空気を読み、かたちを考える。

繰り返し繰り返しして半年すると、設計図というかたちになります。

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 鵠沼の家は、予算が限られていてコストの調整に時間がかかり

設計9ヶ月工事3ヶ月の配分になりました。

 やっぱり、一年はかかるものなんだ。と、今更ながら思います。

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 住まいは人が暮らし始めると、生きだすもの。

人々の息遣いと一緒に、建物も呼吸し始めます。

漆喰や木は、実際に調湿するから、呼吸をしているのです。

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 土間の白洲土のタタキ。早くもいい風合いになってきました。

小さくても、土間と和室の切り替えが出来て、クライアントも

気に入ってくださり、めでたしめでたしです。

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 人の個性は住まいの彩り。お互いが反映しあって、

その家だけの風合いを持ち始めます。

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 アトリエの大きな硝子窓に黒板が入りました。

ゼミの講義もされるし、外せば公園が見えるし。

 一石二鳥、自画自賛。たいへんよくできました。

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 みぞれまじりの空も、帰る頃には明るくなりました。

江ノ電の車窓から、海を眺めて帰途に着きます。よい、一年を。 

居心地の在り処

 鴨長明が暮らした方丈は、四畳半の大きさでした。およそ3メートル角の住まい。

人ひとり座って半畳寝て一畳。雨露がしのげて、安らかに眠ることが出来れば、案外

それで日本人は満足出来る生活をしてきたようです。

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 時は移り、2012年になろうとする頃、家は断熱材で包まって隙間風とは無縁になって

それだけで、昔よりずいぶん居心地はよくなっているはずです。

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 この家は天井裏を作らず、屋根の野地(のじ)板がそのまま仕上げになります。

この上には外断熱で二重の断熱材がのり、温度変化のすくない構造になっています。

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 和室も同じ勾配のついた斜めの天井で、床が畳で上がっているから、低い方は

手が届く高さ。障子の高さは五尺七寸、1メートル73センチです。

現代は2メートルのドアが一般的になりましたが、畳の上に座ると、その高さでは

落ち着かないものです。居心地のよさは、適度な高さの寸法や広さが生み出すもの。

 やたらと高い天井や、よりどころのない広さは、落ち着きのない無節操を生み出す。

それを念頭におけば、設計もヒューマンスケールに落ち着きます。

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 高さを押さえれば、おのずと視線は外の景色に向かいます。お隣の南の庭を借景に

江ノ電の行き交う線路まで、すーっと視線が抜けて広がる贅沢。

市街地でも、窓の位置次第で、落ち着く眺めを得られるものです。

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 居心地とは漠然とした感覚のようですが、心地よい空間は的確な寸法や比例という

バランスから生まれるものです。時代は移り変わっても、人々にとっての居心地は

そう簡単に変わらないはず。古の建物が居心地よく感じられるように、

21世紀の住まいもそうありたいものです。

設計の原点

 今年はじめの一月末から設計を始めた鵠沼の家が完成し、無事引渡しを終えました。

この上ないシンプルな平屋の住まい。敷地の上にちょこんと建っている佇まいです。

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 旗ざお型の敷地の奥に、こじんまりと出来上がりました。

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 日当たりのよい庭に向かって、長く深い軒を出して片流れの屋根をかけます。

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 東の窓の、20メートル先には、小さな公園の緑へと視線が伸びます。

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 シンプルな家には、こんなコンパクトで使い易いキッチンがよく似合います。

水廻りも必要最小限に、かつ小ぎれいにつくりました。

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 小さな家とはいえ、のべ110日730時間の設計と工事監理を経ています。

小さいからこそ、なにがそこにあるべきか、ほんとうに要るものはなにか。ひとつひとつの

事柄を熟考し、吟味していくことで現われる住まいの原点を見つめつつ、じっくり創る。

 窓ひとつとっても、そこにあるべきか、あるとすればどんな大きさで、外にはどんな眺め

を見るのか。ひとつひとつ考え抜くと、自ずからかたちが見えてきます。

 人が住まう場所。本当に必要なものだけで作られた住まいは、そこに暮らす家族の

立ち居振る舞いを、支えより輝かせるものだということ。

そのことを、気付かせてくれました。

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 役所の検査を終え、別の仕事で事務所に飛んで帰り、書類をやっつけてまた戻ると。

冬の午後の陽射しが、いぐさの薫る畳の上に差し込んでいました。

上框に腰掛ながら、ひとりきりの時間を過ごしつつ「設計やっててよかったな」と

ココロでつぶやく年末です。

 

現場のち芋煮の一日

 朝一番に現場に出かけて、夕方まで鵠沼の現場に張り付いておりました。

高校の同級生の建具屋さんに、硝子と引き戸の取り付けを頼んでいたのです。

壁の左官塗りの途中で、大工さん、電気屋さん、水道屋さん、工務店社長、そして設計屋

の私で、小さなこの家の現場は師走一番の賑わいになりました。

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 家の仕上がりが近づくと、電気、ガス、水道の工事も最終段階になります。

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 旗ざおの敷地なので、道路から地面の中を配管します。

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 さて、木の建具。このレールの上を引き戸が走ります。

レールの上に釘のアタマが出ないので、戸車のゴロゴロという音が出ない

ノイズレスレールです。こういうところには、きちんと予算をかけるのが道理。

毎日、出入りする場所ですから。

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 夕方、職人さんたちが後片付けを始めるころあいを見届けて戻り、

ネットワークの忘年会。美味しい芋煮とともに、夜は更けていく一日でありました。

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木と漆喰の家

 祖父が大工だったからか、父が現場屋だったからか、いつの間にか設計屋になって

もう四半世紀。おぼろげながら、自分のかたちの「か」の字が見えてきたように思います。

 早かった今年も、師走なかば。鵠沼の家づくりも最終段階に入ります。

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 旧知の和尚さんがこしらえてくださった棟札は、棟梁の手で大切に小屋裏へ。

家内安全を見守ってくださることでしょう。

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 木の家の窓枠は木であるべき。予算の都合でアルミサッシになっても、目立つところは

木で作ってもらいます。窓のペアガラスが載る下の枠は、雨水が切れるように斜めに

「水返し」をつけています。雨の多い日本では、当たり前だったこういう加工も、

これからはだんだんと減っていくのでしょう。棟梁と私はツーカーで、こういう話が出来て

幸せな世代の、最後のほうかもしれません。

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 木の家には、塗り壁が似合います。通気をとった外壁にフェルト状の防水紙をはって

ラスと呼ばれる金網をかけ、モルタルで下地をつくり、仕上げは漆喰(しっくい)です。

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 仕事の合間をぬって出かけたら、もう北側の壁は塗りあがっていました。

こういう平らで継ぎ目のない壁は、いっきに塗らないとムラになってしまうので、

左官屋さんには苦労をかけることになります。さいわい、涼しい顔でこなしてくれる腕。

心配するには及ばないのです。

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 部屋うちの壁もすべて漆喰。下地塗りがあらかた終わっています。

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 仕上げにいくほど、水を少なくしていく塗り壁。下地になるのは砂しっくい。

これでも、十分にきれいなのです。

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 木の色と、漆喰のオフホワイトは、絶妙の取り合わせ。よい料理とワインのように、

お互いが引き立てあうもの。今夜は(も)、おいしいお酒が飲めそうです。感謝。wine 

繊細 華奢 丁寧

 音楽の三要素は、リズム・メロディ・ハーモニーであると小澤征爾さんが言われていて、

マエストロがとらえている言葉の分かりやすさ、的確に的を獲て、ストンと腑に落ちました。

 建築に置き換えると、規則正しい並び方や部材の大きさが生み出すのがリズムであり、

それは、とりもなおさず骨組みや土台といった、骨格の部分のこと。

 ハーモニーを建築に例えると、それは調和のとれたプロポーションをもつ空間のこと。

人の目が感じる、比例や反復といったバランスの安定した大きさや、ほどよい小ささ。

 そして、メロディにあたるものは何か。それは、細部のさまざまな「かたち」の在り方。

ごつくもなく、弱くもなく。けれども、華奢に見え、繊細に見え。まさに丁度良いかたちに

なるべくしてなっているように、「見える」。それが成り立つには、丁寧な仕事が必要です。

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 限られた予算で、ツーバイフォーの骨と屋根裏の合板が表わしになった鵠沼の家。

唯一の贅沢が、この木の枠まわりです。

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 この真ん中に建つ柱、細いので「方立」 ほうだて、と呼びますが、

ここにペアガラスが入ります。ガラスを入れてからあと、木で隙間を埋めれば楽ですが、

あえてすっきり硝子と木だけで納める。そのために、ガラスを入れる時のために、溝を

斜めに彫ってくれた棟梁の、手間のかかった丁寧な仕事がここにあります。

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 既製品のアルミサッシも、壁がしっくいで枠をつけず、塗りまわし。

角が欠けないよう、合板の固いエッジを選んでこしらえてくれてもいます。

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 設計屋の、意図するところには、職人たちの技術と心意気が、いつも現われます。

家づくりの佳境

 本当にお久しぶりに、傘を手離して歩く、晴れた日曜日になりました。

冬晴れの明るい朝のはじまり、空気が澄んで気持ちの良いスタートです。

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 いい波が立って、休日サーフィンの面々で賑わう冬の海。

麒麟のラベルのような雲がたなびく師走です。

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 慌しい金曜日。とりあえず、机の上の仕事は置き去りにして、鵠沼へ。

大工仕事も佳境を向かえ、そろそろ仕上げの工事に進みます。

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 家をつくる現場、特に木造の家の主役はやはり大工さんです。

図面を的確に読んで、建物という物に作っていく棟梁たち。

 押入れひとつとっても、棚や仕切りの板を作るには、それを取り付ける下地がいります。

次にくる工事の順番を考えつつ、てきぱきと材料を組んでいきます。

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 大工さんと缶コーヒーを飲みつつ談笑する時間は、机の上の仕事より

意味を持つことがあります。あそこはうまくいった。ここのところは、次からはこうしようか。

などなど、目の前の仕事を見ながら、お互いの質を高めあう会話をする。

 設計の仕事が、机上の空論にならないようにするための、相談です。

 現場が始まってみると、物が動いて形になるには「人手」がいります。

骨組みがあらわになる正直な家は、その人の手の痕跡がそのまま住まいになってゆく。

 現場に身を置くことでしか、得られない実感を確かめつつ、の会話です。

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 使う材料も極限に近い小さな家。現場にある材料を、これはまだ使える、あれはもう

小さくて使えない。と、按配しながら段取りをする棟梁たちに、思わず笑ってしまったら、

「先生、笑ってるけど、本当に材料、かつかつなんすから!」と笑って答える。

 無駄の出ないこの家の現場は、改めて家づくりの原点を考えることになります。

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 棟梁たちが、仕事を終えて引き上げる頃、左官やら建具やら、仕上げの工事が

始まります。すこし、寂しくもある現場の日です。

数字にならない仕事

 時代のせいか、今年の出来事のせいか、余裕をもって家づくりの現場に出かけること、

がなかなか出来ません。まぁ、設計屋が行っても、腕の立つ大工さんの仕事の邪魔を

するだけなので、図面を渡した時点で、もうとっくに勝負はついています。

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 現場が始まってしまえば、現場まかせ。引いた図面の通り、そのまま建つわけで、

引いた図面が拙ければ、ダサい建築になるのが当たり前です。すくなくとも、腕に覚え

のある職人さんに、ダサいと笑われないような、図面のレベルにはたどり着いている。

つもりなので(本当は、笑われているのかも)、設計屋が現場に出てすることと言えば、

建材が法律の厚みになっているかとか↑↓構造計算の数値の通りのボルトがあるか、

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 など確認すれば、それでおしまいなのです。手抜きや欠陥工事、などとは無縁の

棟梁たちの仕事は、出来栄えを見れば、誰でもわかりますし。

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 この日も、ここはこうしましょうか?ここのところは、こっちのほうがいいですか?

あくまで、設計屋の考えを尊重してくれて、より良い方向へ導いてくれる棟梁たち。

 足を向けては、寝られない、確かな面々です。

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 設計は、寸法を図面に表して、家を紙の上に表現する仕事。

木材の厚みやら巾、断熱材の厚さや窓の高さ、大きさから、照明の明るさ、水道や

排水、ガスの配管の長さや太さまで、考えてみれば、すべて数字にする仕事ですね。

 かたや、棟梁たちの仕事は、決して「数字」にはならない仕事。

でも、出来栄えや見栄え、そして長持ちする安心を生み出す仕事です。

物を相手に、手と体だけで、家の佇まいを創ってしまう素晴らしさ。

 設計屋がいなくても、家は建ちますが、大工さんがいなくては、建ちません。

せいぜいが、新たな試みを、ささやかに作り方でお願いする、設計屋であります。

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 普通は、横方向に張る、木摺きずりという板を、縦に張ることで、隙間に空気を通し、

より湿気が溜まらぬようにしてみました。これも、板の間隔をちゃんと測って、張ってくれる

から、きれいです。この上から仕上げをするので、見えなくなってしまうけれど、

下地がちゃんとしていれば、おのずと仕上がりがきれいにいくから。

 理屈や数字ではない、立ち現れ方をする立派な「仕事」がここにはあります。

外断熱、下地、意匠

鵠沼の家のつくりは、外断熱で小さくてもそれなりの手間、大工さんの労力がかかります。

柱の中に入れる断熱とは違い、一度耐力壁を作ってからその外側に断熱材を張ります。

 屋根の裏、下から見上げる「軒裏」のきうらは、仕上げがそのまま見える、化粧でも

ありますから、一枚一枚同じにならないよう、出来るだけ自然に見えるように、

ばらばらに張ってくれているのでした。やっぱり、手間がかかっているな。

(そのようにさせているのは、考えた設計屋ですが)

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 地震の力、台風の風の力に耐えるための壁は、構造計算をして場所を決めます。

今回は平屋ですが、計算にきちんと乗せるとある程度のことは必要になります。

このサーモプライは、いわば薄いボール紙を固めたもの。わずか4ミリの厚さで、

軽くてカッターで切れて、しかも丈夫。力を発揮するために、釘を打つ間隔も決められて

その目印も印刷してありますから、楽に効果が出ます。

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 さて、その上に張る断熱材は、秋田杉の皮をコーンスターチで固めた

フォレストボード。口にいれても無害です。(食べないけど)

 いわば、野菜の皮と同じで、建材にならずに、普段捨ててしまう部分を細かくして

固めたリユースの断熱材です。ただ、秋田からの運賃が高いのが玉に傷ですが。

土に還ることが出来る、それだけで使う価値があります。

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 さて、腕のたつ大工さんは建物が雨に濡れない様、翌日の雨模様に備えて、

工事途中もシートを掛ける準備をしつつ、作業をしてくれます。

先の工事の段取りや手配、なにからなにまで、棟梁の力量が物を言う現場であります。

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 この日の棟梁は、西側の窓上につく庇を作っておりました。

箱型のつるんのっぺりとした建売が多い中、雨の多い日本のこと、夏の西日のこと、

など考えれば、やはり庇や軒先の出は必要です。

 ただ、なるべくシャープに薄く、野暮ったくなく、でも丈夫に。頑丈にするだけなら、

大きな材料で無骨にすればいいけれど、上品にすっきり見せるには、ぎりぎりの厚みで、

手間をかけて、下地から丁寧に作る。設計屋は、一本の線を引いただけですが、作り手

の大工さんは、木を選び、木目を確かめ、木の並びを考え、下地を組み、仕上がりを

考えて、木を削り、ゆすって強さを確かめ、取り付ける。言葉に置き換えただけで、

七つも八つもの順序が、その工程にはあるのです。

 次に現場に入る、板金屋さんが屋根を作るから、一遍に済むよう、屋根廻りを先に

固める棟梁たちであります。

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 建築のデザイン、形は意匠と呼ばれますが、棟梁のような匠が意図するところが、

本当の意匠なのだと思います。某TV番組では、設計屋が「何々の匠」と呼ばれてますが

とてもとてもおこがましくて、恥ずかしい。せいぜい、棟梁に馬鹿にされないような、

図面を引くのが精一杯の我々でありんす。

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